試飲会に行ってみました
 某日某所。ワイン輸入業者主催のブルゴーニュワインの試飲会に行ってみた。ブルゴーニュワインの大手インポーターだけあって、ドメーヌ数とワイン数ともにかなりの規模だった。この手の試飲会は始めてだったので、会場内をうろうろ、キョロキョロしながらの試飲だった。ご一緒させていただいた某氏によれば、その規模は前回に比べ縮小されているという。それでも全国から集まった酒屋さんやソムリエで会場はごった返し、人気ワインにはかなりの人だかりが見受けられた。某局の女子アナもいて、ちょっとだけうれしかったりもする。有名レストランのソムリエも数名いたが、普段着の彼らを見るのも試飲会場ならではの光景なのだろうか。

 会場左手からワインにはナンバリングがされていて、シャブリから始まって、コートドニュイ地区、コートドボーヌ地区、ロワール地方、ローヌ地方、プロヴァンス地方とつづき、親会社のワイン部門扱いのカリフォルニア、ニュージーランドと続いていた。受付で手渡されたワインリスト兼テイスティングコメントの用紙をもち、ワイングラス片手に試飲会がスタートした。

 この機会だから全てのワインを試飲するぞと意気込んでみたが、170アイテムを超える数と、油断するとあっという間に空になってしまう有名銘柄に、作戦をコロリと変えて、自分の興味のあるドメーヌを先に攻めることにした。以下その時の印象をダイジェスト的に。なおドリンキングレポートは完全に飲みこんでのレポートだが、今回はテイスティングに徹し、唾一滴までほき出していたので、ほとんど酔ってはいない。


<ドメーヌ・モーム>
 お気に入りの造り手であり、今年4月に訪問したときの情景が目に浮かぶ。ビンテージは1999。ジュブレ1級ラボサンジャーク、シャルム・シャンベルタン、マジ・シャンベルタンのいわゆる「モーム三兄弟」(造語)はそれぞれのテロワールの個性を発揮しつつ、飲み比べが楽しい。特にマジの充実した濃縮感は会場内でも随一だろう。高くない価格設定も消費者にはありがたい。1999のモームは買いだろう。


<フェブレ>
 ネゴシアンのイメージが強いが、所有する自社畑の方が多いというニュイ・サン・ジョルジュの名門。12種類ラインナップされていたが、目指すは特級2種類だ。特級コルトン・クロ・デ・コルトン・フェブレー1998はクラシックな赤系果実味果実香。そのやさしめの味わいは、1998というビンテージによるが、特級をイメージして飲むとそのギャップに苦しむかもしれないほどチャーミングだった。特級シャンベルタン・クロ・ド・ベズ1999は試飲会の目玉的存在。同じくクラシックな造りで、力強くタニックな味わい。今からでも十分楽しめる逸品だ。


<シモン・ビーズ>
 個人的にこのサビニー・レ・ボーヌの名士は白ワインの造り手だと思っている。赤ワインでは、ドメーヌ・モーリス・エカールやドメーヌ・デュデ、ドメーヌ・ルロワと比較され、非常に高品質ながらライバルも多く、地味なアペラシオンゆえ評価も上がりにくい。しかし白は彼の独壇場だ。今回は1種類だけの出品だったが、そのトロピカリーな味わいは、コート・ド・ボーヌのほかの銘醸地とも充分対抗し得る味わいだ。サビニー・レ・ボーヌの白を造らせたら、おそらく彼の右に出るものはいない。今回の1999サビニーレボーヌブランもまた、一歩抜きん出た個性を持っていた。ただし各誌で転載されまくっているビーズ夫妻の写真が会場に大きく掲げられていたが、この写真、どうも古臭くて最新版への更新を望んだりする。


<パトリック・ジャビリエ>
 3種類のみの出品だが、そのムルソーチックな味わいは、安心して堪能できる。ムルソーというアペラシオンをこうも素直に表現されると、ムルソーを飲みたい夜用に数本キープしたくなる。2000年ビンテージは1999よりも数段個性がはっきりしていて、売り場で見つけたらキープしておきたい一品だ。


<アルベール・グリボー>
 いついってもボトルは空になっていて、試飲できなかった。


<ルフレーブ>
 2000年特級バタール・モンラッシェを筆頭に11種類出品していて、最も人気の高かったドメーヌ。個人的には余り好みでないが(ドリンキング・レポートにもあまり登場しない)、ココまで評価が高いと無視もできなかったりする。ヴィオディナミ特有のあの燻した堆肥香がむわっとしていて、ケバくなりがちの味わいながら、2000年はキリリとした酸が全体を引き締めている。2000のバタールと一級フォラティエールは秀逸。バタール・モンラシェは全体のパランスが高水準でたもたれ、潜在的能力の高さが垣間見られる。フォラティエールはとろとろのハニー香に燻し香、焦がし香が加わって強い酸と共に、ふくよかな味わい。1998のビアンブニュ・バタール・モンラシェはすでに熟成感が支配的で、平板な奥行きの無さが首を傾げさせる。ボトルの具合が悪いためだろうか。それとも白ワインのトップ5から落ちたという評価の正しさを証明しているのだろうか。


<ミッシェル・コラン・ドレジェ> 
 8品。シャサーニュ・モンラシェの白一級の飲み比べ。共通の味わいとして、燻したヘーゼルナッツにハニー香があり、ショートケーキ的な要素と若干草っぽい印象も受ける。この村特有のトロピカルフルーツはあまり感じなかったが、しっかりした酸にタニックさが加わりつつも、ふくよかな味わい。しかしながら、ルフレーブの後だとやや地味さも顔をもたげたりする。ところでココのシャサーニュの赤は秀逸。新鮮なプラムの香りに豊かな土壌香が加わり、酸味とタンニンのバランスもよい。シャサーニュ・モンラシェの赤ワイン好きにはたまらない一品だろう。


<そのた>
 ショーブネ・ショパン プスドール ジャン・グリボ フィリップ・ルクレール アミオ・ギュイなど多数

 テイスティングはINAOグラスではなく、どこぞの結婚式で出てくるようなグラスであったため、今回の試飲会は正確に味を見極めるというよりは、いろんな種類を味わってみた程度のレベルだろう。しかも人気銘柄は小指ほどの量しか注いでもらえなかったので、上記のコメントもあくまで参考程度のレベルだ。ある程度テイスティングしたところで、別会場の有料テイスティング会場に移った。その模様は別の機会に。そしてその有料テイスティングから戻って来てからは、別の地方のワインを飲みにかかってしまった。結構酔ったが印象に残ったワインはいくつかある。いずれにしても今回の試飲会参加では、貴重な体験をさせていただき、感謝である。


おまけ三部作
<リュイナール>
 シャンパーニュより。Dom.Ruinardの1988ロゼは芳醇でうまい。

<ギガル>
 ローヌより。コンドリュー・ラ・ドリアーヌ1999。上品だが典型的なビオビオ感。

<ゴールドウォーター>
 ニュージーランドより。2002年ソービニヨンブランは、この葡萄品種の典型的な味わいが、はっきりとしていて楽しいワインだ。植物の葉っぱ系の香りが酔った身体に微笑みをもたらす。値段からすると大いに買いかも。


以上



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