ブルゴーニュからの問題。コート・ドール地区はコート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌに分けて考えることができる。前者は主に赤ワインの大銘醸産地であり、後者は赤の銘醸も多いが、やはり白ワインの大銘醸産地である。今回は単純にコート・ド・ニュイの赤の特級畑とコート・ド・ボーヌの白の特級畑の両方からワインを造り出す生産者をピックアップし、代表的な畑をひとつずつ挙げてみよう。畑の所有形態(註)はこだわらないが、自社所有畑の存在が確認しきれていないネゴシアンは除いた。またこれ以外にもあればご指摘頂ければ幸いだ。
造り手 |
本拠地 |
コート・ド・ニュイ赤の特級 (代表例) |
コート・ド・ボーヌ白の特級 (代表例) |
ブリュノ・クレール |
マルサネ |
シャンベルタン・クロ・ド・べーズ |
コルトン・シャルルマーニュ |
ジョルジュ・ルーミエ |
シャンボール・ミュジニ |
ミュジニ |
コルトン・シャルルマーニュ |
DRC |
ヴォーヌ・ロマネ |
ロマネ・コンティ |
モンラッシェ |
ドメーヌ・ルロワ |
オーセイ・デュレス |
シャンベルタン |
コルトン・シャルルマーニュ |
ドーヴネ |
サン・ロマン |
マジ・シャンベルタン |
シュバリエ・モンラッシェ |
シモン・ビーズ |
サビニー・レ・ボーヌ |
ラトリシエール・シャンベルタン |
コルトン・シャルルマーニュ |
ジャン・クロード・ベラン |
サントネ |
シャンベルタン |
コルトン・シャルルマーニュ |
オスピス・ド・ボーヌ |
ボーヌ |
マジ・シャンベルタン |
コルトン・シャルルマーニュ |
ジャック・プリュール |
ムルソー |
シャンベルタン |
モンラッシェ |
ベルトラン・アンブロワーズ |
プレモー |
クロ・ド・ヴージョ |
コルトン・シャルルマーニュ |
ドメーヌ・フェブレ |
ニュイサンジョルジュ |
シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ |
コルトン・シャルルマーニュ |
ドメーヌ・ルイ・ラトゥール |
ボーヌ |
ロマネ・サン・ヴィヴァン |
コルトン・シャルルマーニュ |
ドメーヌ・ルイ・ジャド |
ボーヌ |
シャンベルタン・クロ・ド・べーズ |
シュバリエ・モンラッシェ |
(順不同)。ジョセフ・ドルーアン、ブシャール・ペール・エ・フィスなども該当するが、ネゴシアンであり、自社所有畑の確認できていないので除外した。
<さて>
こうして並べると意外に多いような気もするが、どんなもんだろう。そして幾つかの共通点に気がつく。まずは白の特級としてコルトン・シャルルマーニュをもつドメーヌが多いことだ。これはコルトンの丘がブルゴーニュの中では広大なためであり、コート・ド・ニュイからも比較的近いためだろう。シャサーニュ・モンラッシェ村とピュリニー・モンラッシェ村にまたがるモンラッシェ系の畑は面積も狭く、仮に畑が売りに出されていたとしても非常に高額になりやすく、おいそれとは手も出しにくいことは想像に難くない。しかもコート・ド・ニュイの村からモンラッシェの畑は意外に遠い。自転車では行くはずもなく、バスも日に何本かしかない。バスで畑は耕しに行かないという節もあるが・・・。車でもかなり時間がかかり、耕耘機(トラクター)ではなおのことだ。
そして目に付くのは、やはり大手資本のドメーヌが多いことだ。ブリュノ・クレール、ジョルジュ・ルーミエ、シモン・ビーズ、ジャン・クロード・ベラン以外はブルゴーニュの大手企業かそれに準じた扱いをされているように思われ、ネゴシアン業を兼務している造り手がほとんどだ(オスピス・ド・ボーヌは形態が異なり、DRCは天下のDRCだ)。大手企業は莫大な資金力を背景に、相続税対策などで困窮する零細ドメーヌを買収したり、資本投入して傘下におさめるなどしてブルゴーニュの新しい方向性を示唆しているようでもある(ジャック・プリュールはアントナン・ロデ社の傘下)。それは相続によって細分化されすぎたブルゴーニュのデメリットを回復する手立てでもある。ルイ・ジャドのコラム参照。
別の視点から探ってみると、上記のリストでブルゴーニュトップ5の評価を得ているのは、DRC、ルロワ、ドーブネだけである。ルーミエは個人的にはお気に入りながら、トップ5にランクインすることはなく、二番手グループだ。トップ評価を受けるジュブレ・シャンベルタン村のデュガもデュガ・ピィも、白ワインのルフレーブもコシュ・デュリもコント・ラフォンも入っていない。彼らはそれぞれのカテゴリーに特化して個性溢れるワインを造っているからだ(ただしコント・ラフェンとコシュデュリは秀逸な赤ワインを、ルフレーブは珍しい赤を造っている)。白ワインなら白ワインで、赤ワインなら赤ワインで、それぞれの世界的評価を得るには非常に困難である。その上で赤白両方で世界トップレベルの評価を得るのは並大抵のことではなく、逆にそれを実現するマダム・ルロワの驚異的な才能に改めて衝撃を受けるのだった。
ところでこのリストにはないが、赤白両方でトップ評価を受けるドメーヌがある。シャンボール・ミュジニ村のヴォグュエである。ヴォグュエは白の特級ミュジニー・ブランを持ち、このワインも世界的評価が高いが、原則的には例外扱いされ、しかも現在は格下のACブルゴーニュとして生産されている。(ミュジニはコート・ド・ニュイ地区の畑のためリストアップしていない)
こうして、違った側面からブルゴーニュを眺めてみるのも、なんて楽しいのだろう。
註 所有形態 = 自社所有・アンフェルマージュ(小作契約・定額制)・アンメタヤージュ(小作契約・出来高物納制)など
以上
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