ラム酒の魅力 (2003/01/22) | |||||||||||||||||||||||||||||||
マイブーム到来の予感である。テーマはラム。ラムはサトウキビを原料にした蒸留酒であり、主にジャマイカやキューバなどのカリブ海に浮かぶ西インド諸島各国で生産されている。ジャマイカといえば、レゲエ。レゲエといえば、マイ師匠はナンジャマン。昔はよくレゲエを大音響で聴きながらマイヤーズをコーラで割ってぐびぐび飲んだものだ。というか、ラムとはそういう酒だと思っていた。ウイスキーより安く、ウイスキーとは違った味わいの蒸留酒。まさにレゲエをガンガン体に浴びながら、飲む酒だとばかり思っていた。もちろんそういう飲み方は素敵であり、今でもそんな風に楽しみたかったりする。今回のマイブーム到来は、それとはまた違ったラムの魅力に引きずり込まれそうな予感がしている。これもすべて藤沢のK女史の巧みな話術という説もあるが、なにより酒を愛する彼女の勧める酒はうまいのだった。ここでラムについて少しまとめてみよう。ラムは、悲しい酒。
<ラムって何> ラムは17世紀に西インド諸島にヨーロッパから渡った蒸留技術によって誕生したらしい。原料はサトウキビ。ブドウと違い、糖分が豊富にあり、誰でも簡単にアルコールを造れるという。時はヨーロッパの植民地政策と重なり、いわゆる三角貿易の発展によりラムは世界的な酒へと成長することになった。三角貿易とは、アフリカから黒人さんを奴隷としてサトウキビ栽培に従事させるために西インド諸島に運び、空になった船にサトウキビからとった糖蜜をアメリカはニュー・イングランドに運ぶ。そしてそこで造られたラムをアフリカに持ち込んで、奴隷の代金として現物支給され、そしてまた空になった船に奴隷を積んで、サトウキビの糖蜜に詰め替えて、ニューイングランドへ・・・。ラムの発展は奴隷制度という悲しい歴史と密接に絡み合っているのだ。俗話をひとつ。アメリカに輸送するラムをいつものように船員が盗み飲みしたときに、ひとつだけ格別にうまい酒があったという。何でこのラムだけこんなにうまいのか。よくよく調べるとタンクの中で黒人さんが死んでいたという・・・。笑えない悲しいブラックジョークだ。 そしてこの糖蜜の関税問題が発展し、ひいてはアメリカの独立戦争まで発展したというから、驚きである。ラムの語源は、今では死語になっている、サトウキビを蒸留した酒を飲んでみんな酔って興奮したという意味の「Rumbullionランバリオン」の頭三文字が残ったといわれている。ランバリオン。ぐでんぐでんにいい気持ち。ラムの原料のサトウキビは、絞り汁を水で薄めて発酵、蒸留する方法と、絞り汁から砂糖の結晶を取り除いた後の糖蜜を発酵、蒸留して造る方式がある。ラムはその風味と色によってそれぞれ三つに分けられる。 <ラムの種類>
<マイブーム> 静かなバーで、ひとり静かに飲む。藤沢某所でK女史と交わすお酒談義もまたよし。 シングル・モルトやオードヴィー、芋焼酎とはまた違ったスピリッツの味わいが楽しい。 <有名どころをいくつか> 以下に紹介するラムは、銘柄だったり会社名だったりして統一感はないものの、まあラム初心者ゆえの至りということで・・・。フランス海外県のマルティニークにはまりそう。ミディアム・ラムにして上品な味わいが楽しめるのだ。 レモン・ハート (未試飲) LEMON HART。お酒の漫画として人気の高い古谷三敏の「BAR レモン・ハート」はJames BURROUGH Ltd ジェームズ・バロー社の銘柄であり、その銘柄は1780年にイギリス海軍へのラム納入業者に指定されたレモン・ハート(人名)が自らの名を記したラムに由来する。そして「レモン・ハート ホワイト」は、カクテルベースとして理想的な味わいを追求してきたラムとして有名である。この漫画を読むと、酒が飲みたくなるから不思議だ。 マイヤーズ (試飲) MYERS'S。ジャマイカに拠点を置くマイヤーズラム。Fred L. MYERS & Son フレッド・L・マイヤーズ&サン社製。ジャマイカ産のサトウキビから造った原酒を厳選し、ラムの熟成に適した気候のイギリスに輸送し、8年間熟成させてから、ブレンドし瓶詰め。日本でもおなじみで、最近ではコンビニでも売っている。レゲエにコーラ割のマイヤーズ。定番である。 バカルディ (未試飲) BACARDI。ラム市場で世界最大の出荷量を誇るのがバカルディ社。「バカルディ・ライト・ドライ」はカクテルベースの定番。と同時に、現在活躍中のお笑いタレント「サマーズ」の前身(・・・関係ないかな)。 バルバンクール (試飲) Barbancourt。J.P.GARDERE & Cie JPガルデル社製。世界の名酒事典'97(講談社)のラムのコーナーで最初に紹介されている銘柄。ハイチ島産。ブリュレしたオーク樽で15年以上熟成させたバンバンクール15年はラムの中でも最高品レベル。味わいは、洗練された収斂性があり、きわめて辛口。時間とともに変化する香りには、カカオ、ミルクなど優しいニュアンスが漂い、そして余韻も丸みを帯びて長い。シングルモルトの銘醸クラスに一歩も引けを取らない実力に新たなる扉が開く思いだ。アライグマ・ラスカルの愛称で親しまれる某T女史の超お気に入りラムでもある。 ラ・マニー (試飲) LA MAUNY。レアもの。西インド諸島に浮かぶフランス海外県マルティニーク最大の蒸留所。藤沢某所でアグリコールのヴィュー Agricole Vieuxを飲んで、ラムの魅力に引き込まれそうな予感がしている。このラムの最大の特徴は、なんと、このラムを規制する根拠が、ワインとオードヴィー(コニャック、アルマニャック、カルバドス)と同じAOC原産地呼称統制法なのだ。驚きだ。ラムにもAOC法が適用されている。Appellation Martinique Contrôlée。やばい。カリブ海といえどもそこはフランス。このラムはワインと同じ精神が貫かれている。AOCラムなので、ラベルにその重要な情報が記載されている。AOCはこれだから分かりやすい。Agricoleはサトウキビの絞り汁を水で薄めて造ったの意であり、Vieuxは3年以上たる熟させたの意味だ。ワインを深く知るなら、ラムも知るべし。そう訴えかけてくるから怖い。味わいは、ラムのふくよかな甘さがアタックにあるのに、喉をすいっと通る滑らかさ。長い余韻に身を委ねていると、いい心地である。癖になりそうな気配であるが、フランス国内でほとんどが消費されるために、レアもの系のラムらしい。今度フランス行ったときのお土産によろしくねと、早くもK女史にせがまれてしまった。 シャンタル・コント (試飲) Chantal Comte。こちらもレアもの。同じくマルティニーク産の銘柄。シャンタル・コントはシャトー・ド・ラ・チュリルリーの一部門。今回は、上記に続けて1977年ビンテージものを飲む。現存しないサン・ルース Sainte Luce distillery で蒸留。同じくリーデルのヴィノム・シリーズ スピリッツ416/17でいただく。ラ・マニーのそれよりも深みとコクがあるが、余韻は短く、個人的にはラ・マニーの方が好きかも。 ロン・サカパ (試飲) Ron Zacapa。グアテマラ産。創業100周年記念のロン・サカパ・センテナリオは甘い口当たりで、サトウキビの風味をそのまま楽しめる。藁を編んだようなボトルに入っていて、見た目も御洒落。甘口ラム。 デパス (試飲) DEPAZ。マルティニークの名門デパス醸造所製。ホワイトラム。樽熟させない味わいもまたくせになりそう。 その他いろいろ文献を当たると、さまざまなラムに遭遇する。 やばい。ほどほどにしないと、肝臓が持たなくなりそうだ。 参考文献 おしまい Copyright (C) 2003 Yuji Nishikata All Rights Reserved.
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