ドニ・モルテ (白) 追加
試飲日 2001年7月15日 (追加2002/03/01)
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOC白ワイン
生産者 Domaine Denis Mortet (Gevrey-Chambertin)  
Vintage 1998
テーマ あの白の1998
ワイン BOUGOGNE BLANC
2002/03/01追加版は文末へ

<ブルゴーニュ・ブラン>
 
ドメーヌ・ドニ・モルテは私が最もひいきにする造り手であり、ちょうど一年前に試飲したあのブルゴーニュ・ブラン1996の衝撃からこのドリンキング・レポートは始まったのだ。思いで深いワインのひとつであり、あのときの感激は今も心のもっとも大切なところに留まっている。もう二度と出会えないかと思われたワインがビンテージを変えて再びやってきた。
 願いはかなう。赤ワインのAOCにして世界に名だたるシャンベルタンを産するジュブレ・シャンベルタン村の端っこに植えられたであろうシャルドネからこのワインは造られている。一説にはドニ・モルテの庭に植わっているとまで囁かれているが、生産本数は600本あまり。なぜそんな少ないワインに出会えるのか不思議でならないが、まずは早速テイスティングといこう。

 色合いはやさしい金色。オレンジを思わせる柑橘系のアロマはいい感じである。構造的にもしっかりとした飲み応えがあり、果実味も豊かである。よく冷やせば天麩羅との相性もいい。ブルゴーニュクラスにして一級を凌駕する実力を持っている。
 
 しかしである。1996で圧倒された強烈な衝撃は感じられない。マロンフレーバーに包まれ、極上の特級コルトン・シャルルマーニュかと思わんばかりの、あの感激は今は昔であった。おいしい白ワインには違いないが、買占め欲求は起こらない。赤の大銘醸地たるコート・ド・ニュイ地区の珍しい白ワインといった印象を感じざるを得ない。期待が大きかっただけに至極残念でもある。価格も1996に比べ1.5倍近くになっており、値段に反比例するかのごとく味わいは・・・であった。

 しかしこのワインの格はACブルゴーニュなのである。特級でも一級でも村名ワインでもない。ブルゴーニュ地方で造られたワインなのだ。地方名ワインの中では間違いなくトップグループに食い込む実力を持っていることだけで、このワインのすばらしい評価は結論付けられるはずである。ただ造り手が当代きってのドニ・モルテであり、1996に衝撃的な白ワインを造ってしまったことが、このワインの立場を宙に浮かせているのだ。この1998も1996と同様の成功を収めるならば、このワインをしてジュブレ・シャンベルタンに新たに白の特級ワインが認定されるはずである。ボグエのミュジニーの白が特級ワインであり、イヴ・ビゾーやこのドニ・モルテのそれがブルゴーニュ格なのは政治の力もさることながら、やはり安定した味わいこそなのだろう。

 すごいワインは特級畑から造られる。それが特級たる所以であり、ワインの歴史に裏づけされた揺るぎ無い事実でもある。たしかにドニ・モルテのブルゴーニュ1996のようなスーパーワインは衝撃波を伴って、ある日突然出現するが、何打席も連続してホームランはかっ飛ばせないのだ。ワインは場所であり、その場所が特級を名乗れないなにかが、そこにあるのだろう。今回のワインで改めて場所の重要性を思い知ると共に、造り手の才能もビンテージには逆らえないのかとも感じる。


<何か納得いかないまま終わった試飲を振り返って>
 1997や1999のワインも飲みたくてしかたがない。いつか出逢えることを信じつつ、ドニーのアリゴテも秋に飲めそうな予感がするぞ。


<2002/03/01追加版
 蛍光灯。液温18℃。抜栓後すぐINAOへ。黄色っぽい金色。1996ビンテージを彷彿とさせるマロン香に燻し香が複雑に絡み合い、全体的に甘い基調が豊かに漂っている。クリーミーな口当たりは、特級コルトン・シャルルマーニュと見間違うばかりだ。酸味も十分感じられ、引き締まった印象を受ける。やや苦味もあるが、いい方向に作用していて余韻も長い。ラストはケーキ香も加わり、半年の追加熟成でここまで味を整えてくるところがにくい。2杯目は若干冷やしてサービスされたが、半年前のぱっとしない味に戻ってしまった。グラスを手で温めても味は低下するばかりだった。この不安定さがACブルゴーニュの性かもしれない。持久力の無さは、このクラスにしてやむを得ないところである。ラストの物足りなさを差し引いてもかなりの満足感は、ワインの悦びに通じている。

 1996は今でも注目を浴びるビンテージだが、この1998もそれを追い越せはしないが、かなりの実力を見せ付けている。都内にも結構散らばっているので、買いあさるなら今がチャンスかもしれない。ドニーよ。今宵もありがとうである。前回のレポートではこのワインは生産数600本程度と書いていたが、妙に都内でも見うけられたので、本当はもっとあるかもしれない。


<ドニ・モルテ レポート>
クロ・ド・ヴージョ1997
ブルゴーニュ・ブラン1996


以上
 


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