ゴーディショとは何か
試飲日 2001年7月29日
場 所    埼玉県内某所     
照 明 夕暮れ時の自然光
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOCワイン
生産者 Domaine Machard Gramont
Vintage 1998
テーマ ゴーディショ初体験
ワイン Vosne-Romanée 1er Cru Les Gaudichots

<ヴォーヌ・ロマネ レ・ゴーディショ>
 今回のワインは特別企画です。妙に辛口になってしまいましたこと、冒頭にお詫びしつつ、試飲の機会を与えてくれた某氏に感謝である。造り手毎が原則のドリンキングレポートにして今回のレポートは例外です。ゴーディショという畑に俄然、興味があるためです。


<畑の場所>

 レ・ゴーディショはDRC単独所有の特級ラ・ターシュを囲むように三ヶ所の飛び地からなる。特級ラ・グランド・リュや一級マルコンソールとの接点に点在し、人も羨むような極上の立地条件を満たしているかのように思われる。格付については諸説ある。パーカーは3つの飛び地とも一級と表記しているが、マット・クレイマーは一級畑1.0283ha、村名畑0.526haと紹介している。ワイナート誌では西端の三角形の畑は村名になっている。ちなみに今回のワインには一級畑である。ゴーディショは生産量が少ないため市場で見かけることは稀である。


<造り手>
 DRCも一級ゴーディショを所有するが、DRC名でリリースされることはなく、ネゴシアンに転売されていると思われる。DRCの近所に住むドメーヌ・フォレも造っているが、パーカーの評価は1990年で88点である。その他数名が造っていると思われるが、有名な造り手はいない。当然今回の造り手も私は知らない。


<もうひとつのゴーディショまたは正当ゴーディショ>

 特級ラターシュは二つの区画からなる。(ラ・ターシュ)と(ラ・ターシュまたはレ・ゴーディショ)である。1932年ラ・ターシュは例外的にフランス政府により隣接するゴーディショの畑を吸収し、面積が広がった。AOC法制定の3年前の出来事である。今回のゴーディショはその時に組み込まれなかった方の畑から造られている。


<味の印象>
 濃いルビー色である。INAOから溢れ出るアロマはモワンとした湿った土壌香。クサヤを品良くしたような苦手なアロマである。くさいぞ。まさかと思った。これが忌み嫌われるペルナン・ロサンのモン・リュイ・ザン1995のそれと同じ類のアロマなのだろうか(この香りは1995に限定し、ほかのビンテージに影響はない)。
 ロサンのそれ自体はドリンキング・レポートにあるように私は感じたことはないが、1995年のモンリュイザン話を避けて通る人たちの苦々しい笑顔が思い起こされた。
 
 時間が少したった。臭みのある土壌香が消えた後は、黒系の果実香が品良くグラスを満たしてきた。ほっである。ほっとしたまではいいが、後に続くものはない。決してまずくはないが、この村特有の怪しげなオリエンタリックさはなく、余韻があるわけでもなく、なんだかまさしくゴーティショという感じがしてならない。特級ラターシュに隣接はすれど、組み込まれなかった畑。ブルゴーニュは道一本隔てただけで、味わいをがらりと変えるが、なるほどこのワインがそういう立場である。

 または造り手の妙なのだろうか。ドリンキングレポートに登場する造り手と同じレベルで語ってはいけないのだろう。無名には無名の理由がある。このワインを買い求める最大にして唯一の理由は、レ・ゴーディショというラ・ターシュに隣接する畑であるということである。珍しいワインの典型的な存在ともいえる。

 んん。なんだかちっとも誉めていない。ご馳走になっておきながら、なんてことを言っているのだろう。おさらいすれば、今回のワインは決してはずれワインではない。そんな言うほどまずくもないが、心を揺さぶるほどのパワーは持っていなかった。ヴォーヌ・ロマネという大銘醸地の恩恵を被りつつ、その秘めた実力は内緒のままだった。至極残念ではあるが、納得せざるを得ないかもしれない。ゴーディショを飲んだという事実が優先するワインであることが少し哀しかったりする。おそらく、今後市場で見かけてもエチケット眺めるだけで終わりそうである。そういえばラ・グランド・リュも印象薄い。なぜだろうか。なぜラターシュがあれほどまでのパワーを持ち合わせているのか、逆に興味が沸くから不思議である。


以上
 


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