ジョルジュ・ルーミエ 1996 | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2001年8月17日 | |||||||||||||||||||||||
<特級 クロ・ド・ヴージョ> 完璧かつ洗練されたルビー色は極上のピノ・ノワールでしか表現し得ない色合いだろう。黒系と赤系の中間にあり、深く、落ち着きのある趣である。光にかざせば、鮮やかなルビー色がきらきら輝き、その美しい輝きはテーブルに置いたINAOグラスの足元にくっきりと輝いたいる。この色合いを見ただけですでに感激モードである。 香りはチョコレートと温かみのある土壌香が程よく混ざった感じ。いい。すごい。うおっである。これは、偉大なワインである。口に含めば力強さをずしりと感じ、黒系の果実味をこころゆくまで堪能させてくれる。強すぎず弱すぎないタンニンのバランス感覚が口中を覆いつくし、まもなく、うまみ成分が身体全身を包み込んでくる。鳥肌がすっと立ち、夢心地モードに浸らせてくれる。クラシックタイプの典型とも言えるこの味わいには、媚びた甘さがない。甘くないのに、実は甘い。この上品な甘さを表現するには経験が足りないが、しいて言えば、都心のデパートの地下食で最も高いお菓子をほんの少しだけ頂いたような、そんな上品で繊細な甘さである。葡萄本来が奥底に持ち合わせる甘味成分が、ワインとなったときにようやく顔を出したくらいの、繊細な甘さである。辛口赤ワインが静かに秘めるこの甘さをルーミエは言葉すくなに教えてくれている。 このクロ・ヴージョは奥行きのある力強さと繊細さを持ち合わせ、土壌香をベースにしている。言葉であらわすと矛盾しているような気がしないでもないが、この絶妙なバランスとしばらくつづく余韻に感激を受けないはずがない。クロ・ヴージョの最高峰に君臨すること間違いなしだ。この出会いは感激である。惜しむらくは、ルーミエが造る最後のビンテージであるということだ。1997以降はルーミエはクロ・ヴージョを造っていないのだ。原因は不明だが、おそらく耕作期間が終了したためだろう。契約社会フランスらしい逸話である。どんなに優れたワインが造られようとも契約の終了は如何ともしがたいのだ。飲み手の理屈からすれば至極残念である。 今後も、本拠地シャンボール・ミュジニの特級ボンヌマールと特級ミュジニそして一級レ・ザムルーズ、さらには名作コルトンシャルルマーニュを筆頭にルーミエのワインを堪能したいものである。ルーミエはどのクラスにおいてもそのアペラシオンの代表格的ワインを造り出すのだから。今後も注目しつづけたい造り手のひとつである。 最近の関東地方は朝夕過ごしやすくなり、俄然赤ワインが恋しくなる夜がいくつもおとずれそうである。楽しみは尽きない。今回のテイスティングに関し、日頃より大変お世話になっている某氏と某氏に感謝申し上げます。これでは誰だかわからないぞ。 <ほかのルーミエ> ボンヌ・マールとコルトンシャルルマーニュ シャンボール・ミュジニ1995 以上 |