コント・ジョルジュ・ド・ヴォグエ
試飲日 2001年11月11日
場 所    神奈川県内某所   
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine Comte Georges de Vogüé (Chambolle-Musigny)
Vintage 1998
テーマ シャンボール・ミュジニ 特集 3
ワイン Chambolle-Musigny Premier Cru
 
<はじめに>
 今回のテイスティングは特別企画です。ブルゴーニュを代表する造り手の1998年ビンテージのシャンボール・ミュジニを飲み比べて、大切な夜に最高の飲み方で味わうための準備をしようというものです。同一条件によって飲み比べられたシャンボール・ミュジニは、大変興味深く、とても印象的な夜であった。次に飲むとき、今回の経験を是が非でも生かしたいところである。飲み比べたワインは下記の通り。この場ではヴォグエについて語りたい。ちなみにヴォグエはドリンキング・レポート初登場である。

デュジャーク 1998 シャンボール・ミュジニ
アンヌ・グロ 1998 シャンボール・ミュジニ ラ・コンブ・ドルボー (1級)
ヴォグエ 1998 シャンボール・ミュジニ 1級
ユベール・リニエ 1998 シャンボール・ミュジニ 1級 レ・ブード


<味わい>
 抜栓して細めのデカンタに移して蓋をし、待つこと30分。室温。INAOグラスへ。
 黒系のルビー色は質感を伴い、格上の余裕すら垣間見られる。キャラメル香を感じるのは気のせいだろうか。なまめかしさが漂うワイングラスは、ヴォグエの存在感を示しつつ、歯茎に染み入る荒々しさがとても印象的である。この濃縮感も心が弾む。いい。さすがヴォグエのシャンボール・ミュジニである。
 シャンボール・ミュジニといえば絹のような繊細さが特徴であるが、このワインに限ってはその限りではない。荒々しさがまだ前面に出ていて、こなれていない。デカンタをしてもなお媚びることのない深みには、ヴォグエのこだわりをすら感じる。さればロブマイヤーに移してみよう。極上のワインは丸で飲め。グラスの丸みがワインの懐の深さと重なって、至福の時が約束されそうである。しかしデカンタした後の大きめのグラスでは、一瞬丸みを帯びたかのように思いつつ、静かに消えていってしまった。うまみの妄想雲はあれれと思うまもなく、どこかの空へ消えていってしまった。
 これだからワインは難しい。
 ヴォグエの名声があれば、この飲み方でも十分に喜びを共有できるだろう。しかしこのワインが潜在的に持つ能力は、蓋付デカンタ30分・INAOグラスでは引き出し得なかった。なまめかしさを保ちつつ、この荒々しさを消したかった。シルキーな味わいを引き出したい。どうすれば、そんな味を楽しめるのか。答えの想像はつく。しかし実践してみたい。ああやれば、ああなるのだろうと思い描く雲は、自分の空にしっかり浮いている。その雲を頼りに次回は、ぐぐぐっと唸らせたい。どんなそれかは、まだ内緒。それはともかく、貴重な経験に感謝である。
 ボトルナンバー No.01201


<畑>
 格付けはシャンボール・ミュジニ1級であるが、裏面には特級ミュジニの若木とある。ミュジニを名乗れる畑ながらヴォグエの判断で、一級に格下げされたワインである。畑名を明記しないため、ACシャンボール・ミュジニの特級または一級畑の区画内から造られたワインではあるが、その場所は特定できない。額面通り100%ミュジニの畑からかもしれないし、他の一級畑の葡萄がブレンドされているかもしれない。そこが同じ一級のレザムルーズとはコンセプトが違う。

 何故ヴォグエは格下げにしたのか。それは特級ミュジニの品質保持にあるのだろう。このワインをミュジニとして世に出せば、確実にヴォグエの評価を下げる。けだしルロワのミュジニとは比較の対象外だからである。ブルゴーニュのトップ5の評価を受けるヴォグエにして、看板ワインのミュジニには相当のこだわりがあるのだろう。誰よりもすばらしいミュジニのためには、このワインを一級にせざるを得ないジレンマを感じる。特級として売り出しても何ら問題ない味わいながら、頂点を極めるには少し弱い。ミュジニを造らないDRCとは比較ができないが、ミュジニはルロワと必然的に比較される。この村に本拠地を構えるドメーヌとして地元では負けられない自負があると思うことは想像に難くない。

 すべてはおいしくあるために。名声と品質を保つために。一流のドメーヌには一流の苦悩がそこにあるのだろう。その苦悩ゆえ、このワインはお買い得である。10万円を軽く超えるルロワのミュジニの1/10以下の価格にして、味わいには価格差ほどの差はない。
 とっておきの夜に、とっておきのワインとして大いに楽しみたい。
 このドリンキング・レポートにヴォグエは初登場である。いずれ看板のミュジニやボンヌマール、ミュジニ・ブラン(今はACブルゴーニュ)、レザムルーズも楽しみたいところである。


<参考>ボトルの裏紙
Ce vin que nous avons replié en "Chambolle-Musigny Premier Cru" est issu de jeunes vignes du Musigny Grand Cru du Domaine Comte Georges de Vogüé

 私たちがシャンボール・ミュジニ1級としてリリースするこのワインは、ドメーヌ・ヴォグエ所有の特級ミュジニの若木から造られています。


以上


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