J・J・コンフュロン
試飲日 2002年3月15日
場 所    神奈川県内某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Domaine Jean-Jacques Confuron (Premeaux-Prissey)
Vintage 1998
テーマ JJCの傑作
ワイン ROMANEE St-VIVANT
 
<ロマネ・サン・ヴィヴァン 特級>
 やや冷やして抜栓後INAOグラスへ。液温20℃。茶色が色濃い黒系ルビー色で、蛍光灯の光を浴びて美しく輝いている。エッジにムラサキは無い。香りは鼻に飛び込んでくるほどのインパクトは無く、鼻で探すような感じである。黒砂糖に漬け込んだような黒系果実が漂い、ゆらゆら揺れている。時間と共にミルキーなカラメルも現れ、焦がし香もカラメルの前後に登場する。次第に香りに勢いがつき、風邪で詰まり気味の鼻腔をすいっと突き抜ける。香水に彩られ、ブラックチェリーの果実香と品よく混ざり合い、なんだか怪しい雰囲気が持続する。口に含めば、輪郭のある酸味が印象的で、そのためにしっかりとした強さを醸し出している。タンニンの渋みは表に出ておらず、丸みを帯びた旨み成分が他者を圧倒してくる。

 このロマネ・サン・ヴィヴァンのおいしさをどう表現していいのだろうか。濃いわけでも強いわけでもないのに、なぜかググッと引きこまれる。軽いタッチなのに深みがあり、余韻も長いのに、いつもの夢心地というよりは体が温まる悦びに包まれる。この感覚に適当な言葉が探せずにいると、肩から二の腕にかけてポッと熱を帯び、アルコール以上に酔いを回らせる。おいしい、けれどそのおいしさがどこから来るものか特定できない。例えは適当でないが、夏のプールで仰向けになりながらぷかぷか浮いて、両耳が水面との境目で波の音を感じるような「ぷかぷか感」と似たような感覚だ。目を閉じてもギラギラ揺れる太陽を意識し、時折目蓋に波を受けながら、地上とは違う音の響きに夏の思い出が重なる。今宵は夏のプールではなく、JJCのロマネ・サン・ヴィヴァンが目の前に置かれているのだ。不思議な味わいである。

 郷愁が身を襲ってくるので、気分を換えてみよう。半分残っているボトルを20分ほど置いておき、再度空になったINAOへ。香水的な要素が強まっていて、旨みが増幅されている。ミルキーさも衰えを知らず、強さを全面に出しつつも、なぜか弱々しさも偲ばせる。結局強いのか弱いのかよく分からない怪しさだ。なんだこれは、である。

 さらに抜栓直後にリーデル・ソムリエシリーズ(400/1)に注いで紙ナプキンで蓋をした方を試飲。全体的なインパクトは圧倒的に強くなっていて、それぞれの要素にパワーを感じる。しかし持続力は弱く、飲み始めて10分もしないうちから弱り始め、油断している間にその使命は終えてしまったりした。
 
 このワインは大人数で楽しむよりは、小人数で、できればたった一人で味わいたい。ワインと対峙し、格闘するに値するからだ。グラスの違いや時の流れなどによって、さまざまな面を覗かせるワインを一人で見極めてみたい。ワインとの一騎討ち。勝負だ。ワインに戦いを挑みながらも、結局はすっかりワインの懐に採りいれられてしまうことは容易に想像できる。そんな酔い方もたまにはしてみたい。ワインにひとり浸ってみたい。ここにヴォーヌ・ロマネの特級にしか持ち合わせない魅惑を感じたりする。真剣勝負の後はきっとSPドライがおいしいことだろう。


 2002年2月JJCセラー蔵出
 醸造長のアラン・ムニエ氏曰く「ドメーヌとしての記念碑的」傑作という。
 

<参考 JJCのドリンキングレポート>
 クロ・ヴージョ1996
 ニュイサンジョルジュ・レ・フルリエール1998


以上



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