モーリス・エカール | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年05月12日 | |||||||||||||||||||||||
<レ・ピュイエ>
抜栓後INAOグラスへ。黒赤っぽいルビー色で、エッジにムラサキはないもののかなり濃いい色合いだ。甘くないビターな果実香が漂いつつも、いまひとつインパクトにかける香り立ち。まだ閉じているのだろう。無理はない1999年なのだから。ここはじっくり待つとしよう。口に含めば皮のエキスを感じるようなタンニンが黒系の果実味に優先している。タンニンの渋みが過ぎ去った後にはうまみ成分が残っていて、ほのぼのとしたおいしさを感じる。なにやら食道で吸収したうまみ成分が、血液に乗って全身に運ばれるような、そんなうまみである。しかし村名サビニーの強烈なインパクトに比べて、ひまひとつピンと来ない味わいが寂しい。村名は何であんなにおいしかったんだろうと、格上のワインを飲みつつ、感じたりする気持ちが少し嫌だったりもする。そんな邪念がワインに伝わってしまったのだろうか。うまみ成分が階段を一段ずつ降りていくように後退してしまった。ワインへの集中力が欠けたために、残念な飲み方をした。反省だ。ちなみにパーカーポイントはサビニーにしては高得点の91点をつけ先月セラー蔵出されたワインだったりする。 <ジャロン> 気を取り直して、次ぎのジャロンへ。このワインはモーリス・エカールファンにとって最も評価の高いワインで、飲む前から期待が膨らんでいる。グレートビンテージの看板ワイン。パーカーは92点の高得点をつけている。さあ。 抜栓後おなじくINAOグラスへ。色合いはピュイエとほぼ同じ色合い。湿った土壌香があり、んん?。床屋サンで隣の人がパーマをかけているような妙な香りがする。口に含めば、微発砲。舌の先をピリピリ刺激する危ない感触だ。不安がよぎりつつも、テイスティングを続行。しかし果実味とエキスとアルコールがうまく溶けこめず、バラバラの印象が拭えない。なんだこれ。決してまずくはないが、いつものエカール節は微塵も感じない。何かがおかしい。何がおかしいのだろう。時間と共に微発砲は感じなくなり、果実の甘味が現れて、余計になんだか分からなくなる。どやどやしている間にテイスティングは中止され、結局真相はつかめないまま眠れぬ夜を過ごすことになった。 翌日原因が判明した。ノンフィルター処理のために微生物が処理できず、そのために劣化の可能性が大きいという。同じケースから3本の異常が発生したため、某店からジャロンは消えてしまっていた。全数返品らしい。フィルター処理は微生物を除去する方法のひとつだが、同時にワインのうまみも除去するということで、最近はノンフィルターが流行になっている。細心の注意が払われて醸造されるワインも極稀にこういった不良が発生するらしい。高温劣化の場合はシェリー香があるし、低温劣化の場合は、もっとまずいワインになっているはずだ。ノンフィルターのリスク。そんな不良は初めての経験だ。インポーター情報によれば、他のジャロンからは同様の不良は報告されていないという。どうやら偶然出会ってしまったようだ。貴重な経験だ。ああびっくりだ。 というわけで、今回のモーリス・エカールは納得できないままワインがなくなってしまった。次回どこかで出会えたときにリターンマッチといきたいところだ。ドリンキングレポートではあまり劣化したワインは登場しないので(ゴルドングジャグルルマーグニュ事件以来1年半ぶりだ。あの頃私は若かった。。。)、こんな経験も今後に役立つことだろう。 ピュイエの方は別に不良品ではないので、近日中に再挑戦したいが、村名をもう一度飲みたい気もするし、、、大変だ。 ふう。 以上 |