ドメーヌ・ベルナール・デュガ・ピィ
試飲日 2003年05月30日
場 所    神奈川県某所s
照 明 不明
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Domaine Bernard DUGAT-PY (Gevrey-Chambertin)
Vintage 1996
テーマ デュガ・ピィのおいしさ
ワイン Gevrey-Chambertin VV

<ジュブレ・シャンベルタン>
 
抜栓後すぐINAOグラスへ。本来ならば、デカンタするなり抜栓して1時間待つなりするほうがベターかと思われたが、抜栓直後からの変化を楽しむために敢えてすぐグラスへ注ぐ。薄いガーネットに近いルビー色で、この薄く枯れゆく色合いは予想外の進行具合だ。ブラックベリーの面影を残しつつ、紅茶葉、干しイチジク、なめし皮が静かに香っている。口に含めば、するりとした滑らかな味わい。酸味がやや強調されつつも、そして丸いタンニンを感じつつも、あたかも水のような飲みやすさ。クラシックな味わいは余計な甘みを感じさせず、あっけないほどの滑らかさで喉を通過する。そして、このワインはここからが凄い。飲み終えた後から押し戻ってくるバックテーストが舌をゆっくり刺激して、唾がジワリと溢れ出る。余韻も長く、いつ終わるか知れない心地よさがエレガントな時空を造り上げている。すばらしいのである。しかし、口に含んだときの水のごとき滑らかさが、ジュブレらしさを感じさせず、なんだか少しばかり違和感もあったりする。

 そこで30分待つ。ぐぐぐぐぐっ。来たっっ。なんとも味わいに濃縮感が出てきて、肉厚な弾力性のある構造が浮かび上がってくるではないか。香りにもイチジクのほかに乾いた土壌香や煙、そしてレアで焼いた赤身肉の肉汁系のニュアンスが重なり、かくも動物的なのに、エレガントさをキープする潜在能力の高さに心は躍り続ける。熟成感がこれほどにも肉厚に感じられるとは・・・。凄すぎる。とても村名とは思えない破格の味わいがここにある。並みの造り手の特級ワインを遥かに凌駕する存在感は、パンもチーズも寄せ付けず、ただただこのワインがなくなるまでの時間をともに楽しみたい欲望に包まれる。

 もっと飲みたいのに、飲んだ分だけなくなってしまうジレンマとの戦いは、時間が経つほどに強まり、そして味わいそのものもますます強烈なメッセージを伝えてくる。恐るべし味わいなのである。全身に鳥肌が立ち、深い感動に身を寄せる瞬間がなんともエキゾチックなのである。完璧である。

 デュガ・ピィ本人曰く、このジュブレ・シャンベルタンVVは8年後から10年後が飲み頃とのことで、今回のワインは今がちょうど7年目なので、まさにこれから威力を発揮するのだろう。まだまだ登り続けるであろう味わいを、坂の途中で味わう醍醐味。今宵の出会いに大感謝なのである。

 またこのワインは2年半前にも飲んでいて、当時のコメントを読み返すと、結構恥ずかしかったりもする。

以上
 
 デュガ・ピィ訪問記



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