ベルナール・デュガ・ピィの畑仕事

訪問記はここをクリック
ジュブレ・シャンベルタン一級畑 ラボー・サン・ジャークの
手入れをするベルナール・デュガ氏 (2003年6月27日午前中)

 ベルナール・デュガ・ピィとともに歩くジュブレ・シャンベルタン一級ラボー・サン・ジャークの葡萄は、6月の猛暑を受けながら、青々と茂っていた。この一級ラボ・サン・ジャークは道路に面し、比較的平地に位置している。「なぜトラクターを使わないのですか」という質問に、「トラクターは重いので土地を傷める。テロワールはこの大地から生まれるから、大切に扱わないと駄目。特に一級畑以上はテロワールを素直に表現するために完全手作業で大切に葡萄を育てている」と明快な答えが返ってきた。葡萄栽培に細心の注意を払い、猛暑の中、伸びすぎた枝を切りそろえる作業をするベルナール・デュガ氏。切りそろえられたピノ・ノワールは美しく、日本の盆栽を連想させた。「どうだい、綺麗な畑だろ。」自信に満ち溢れた表情からは、決して世界一の名声に奢ることのない謙虚な姿勢がうかがわれ、世界一のワインはその畑もこの上ないほど美しく、世界一の所以を畑から連想するとき、私の胸中に感動の嵐が吹き荒れるのだった。すべては「美しさ」で繋がっている。物腰のやわらかい語り口、仕事の手際、畑、カーブ、私邸、そしてワイン。そのすべてにおいて、「美しい」と表現させる氏のワインに込めた魂を感じる幸せ。私は今までビンテージ情報や他人がつけたワインの点数に一喜一憂しすぎていたようだ。ワインを点数で評価することに違和感と疎外感を感じ、今後は特に、氏の苦労を分かち合うような飲み方をしなければ、氏の誠意に答えることにならないのではないかと自問自答したりする。すべてはおいしく飲むために、である。

 葡萄栽培から、醸造、熟成、瓶詰め、販売までを一手に行なう氏。世界中のワイン雑誌には彼のワインを大絶賛する美辞麗句が並ぶが、その世界最高の評価の裏には、こんな地味な畑仕事の毎日があるのかと思う、一瞬にして鳥肌が立ってくる。畑は粘土石灰質で、雨の日に比べ、晴天のこの日は粘土も乾いていて、歩きやすいとは言うものの、10畝分の畑を往復するだけでも汗がにじみ出てくる。氏は肉体労働を意識させることなく、軽快なリズムを踏んでドシドシ奥へと進んでいく。畑仕事の大変さを顔に出すことはなく、畑に出ることに幸せを感じるような真剣な目つきと、手際の良い作業を見るにつけ、デュガ・ピィ恐るべしと心に刻まれるのであった。彼の真心こもったワインを日本の現場で如何に表現するか。飲み手の力量が問われている印象を受け、ますますブルゴーニュ魂に磨きをかけようではないか。ワインはもっとおいしく飲める。もっとおいしく飲もうではないか。そんな独り言を呟いたりした。
 
○で囲んだ辺りの10畝ともう一箇所にあり、両方で、面積0.15ha
ちなみに道路を挟んで奥側は村名格マルシェの畑。
.
左側に描かれているカーブは下の写真が現物
酷暑を受け、2001年のワインも一階のオフィスからここに避難されていた。

 ドメーヌ訪問記

 新しいワインへの挑戦

 デュガ・ピィ考

2003/07/08
Photes by Yuji Nishikata



目次    HOME

Copyright (C) 2003 Yuji Nishikata All Rights Reserved.