この一年間に[ブルゴーニュ魂]一押しの造り手のベルナール・デュガ・ピィのワインをいくつか飲む機会に恵まれていて、ご一緒させていただいた方々とレストラン関係者にこの場を借りて感謝申し上げるとともに、少し綴ってみよう。ドメーヌについてはドメーヌ訪問記 畑仕事 スクープを参照にて。
まずはじめに私は、デュガ・ピィのおいしさに気がつくのに相当の時間を要したことを告白せねばならない。理由はふたつある。まず第一にはデュガ・ピィのワインはあまりにも少ない生産量のため、入手が極めて困難で、何度も繰り返しその味わいを確かめることができず、たまに飲む機会に恵まれても、ご一緒させていただいた人々の表情を眺めては「どうもこれをおいしいと言うらしい」と思う日々が続いたことがある。これはふたつ目の理由にも絡むことだが、デュガ・ピィのクラシックな味わいは、他の造り手、たとえばドニ・モルテやロベール・グロフィエなどの豊かで奥行き感のある果実味に比べ非常に分かりにくく、平たい言葉をあえて選ぶなら、「愛想がない果実味」「甘くない果実味」だと思われたのだ。モダンスタイルとクラシックスタイル。両者を明確に分ける定義は見当たらないが、モダンスタイルと呼ばれるワインの「甘さ」を感じる果実味に慣れてくると、媚びない甘さのデュガ・ピィのワインは馴染みがない分、縁遠く思われたのだった。これがふたつ目の理由である。
正直な話、デュガ・ピィのワインのおいしさを実感できるようになったのは、ここ一年ほどである。それも飲み方に細心の注意を払えば払うほど、そのおいしさを満喫できることを知った。デュガ・ピィのワインは無造作にグラスに注いだのでは、本当の味わいが楽しめないのだと気がついたりした。デュガ・ピィのワインと対峙する時、持てる知識を総動員して、持てる器具をフル活用することが必要かと思うようになった。
ワインを飲む機会が増えると、やがて味の好みにも変化が訪れる。個人的な好みをいえば、かつては濃くって濃縮感があり、パンチ力のあるストレートな味わいに共感を持っていたが、最近はしみじみ旨い系の滑らかで球体に近いワインを好むようになっている。こうした味の好みの変遷もデュガ・ピィの評価に影響を及ぼしているように思われたりする。
しかし、まだまだサンプル数が少なく、最近は富に、本当にデュガ・ピィの造るワインがおいしいのかを検証したい欲望に駆られている。幸いにも数本のデュガ・ピィが手元にある。ここはひとつデュガ・ピィを水平に、垂直に飲み込んで、本当のデュガ・ピィのおいしさを探す旅に出てみよう。
まずは11/24の甲府を皮切りに、場所と時とアペラシオンを変えて、デュガ・ピィづくしの旅にでてみよう。いずこで、そんな旅の途中に誰かと出会い、感動の共有が出来れば幸いである。そして、その結果やいかに。クリスマス頃に結果が出ればうれしいと思うこの頃だったりする。
おしまい
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