シャトー・メルシャン
試飲日 2002年12月06日
場 所    神奈川県某所   デジカメ忘れました
照 明 蛍光灯
種 類 日本のワイン  
生産者 三楽オーシャ(株) (メルシャンの前身)
Vintage 1960
テーマ 日本の匠
ワイン スペリオール・シャトーメルシャン
 
<日本の匠シリーズ 第四弾>
 
今回のワインはスペシャル企画です。この白ワインはまさに1960年が初ビンテージで、ボルドー系葡萄品種を使って世界を目指そうとした先駆け的存在である。葡萄品種は、ソービニョンブランが70%で、残りがセミヨン。超有名某所にて40年にもわたり大切に貯蔵されていたもので、おそらくは某所以外での試飲は不可能だが、日本の匠に敬意を表し、このレポートで紹介したい。


<スペリオール 1960>

 抜栓後デカンタ。蓋をしないで、待つこと5分。勢いをつけてINAOグラスへ。内側から輝く黄色めの強い金色で、色素がすべての分子に染み込んでいるような美しい色合いだ。シャサーニュ・モンラッシェを連想させるトロピカリーな香りが一瞬強烈に香ったかと思うと、静かにその身を閉ざしてしまった。口に含めば、本格的な辛口で甘味は少しも感じない。酸もしっかり存在し、うまみ成分も申し分ない。ハイインパクトな古酒であり、その歳月の隔たりが俄か信じがたかったりする。なかなかいいぞ、と思いつつも、香りがガクンとなくなったのが気にかかる。時間が少したてば何とかなるかと思いつつも、おやおや味わいが後退しかかっていく。明らかに味わいにヘタリが感じられ、42年の歳月は否定できないと思ったりした。最初のインパクトが強かった分、すとんと落ちた味わいは、それでも低めではあるが良質で安定していて、なにやら不思議な感覚だ。このまま終わってしまうのだろうか。そんな不安がよぎった・・・。

 しかしである。さらに時間がたつと、甘いパウダー系の香りがグラスから満ち溢れてくるではないか。バター香も感じられ、身がキュッとよじれるほどの極上系の香りへと変化している。なんだこのパワーは。さすがに味わいには苦味にも似たヘタリを隠し切れないが、この香りだけでも奇跡に近い。とても42年前に造られたワインとは思えないほど生き生き香っているのだから。


 貴重にして、希少な経験。
 いわゆる熟成したシャサーニュ・モンラッシェにも匹敵するこの味わいは、日本の匠と賞すべき傑作だ。日本が誇る高い技術力を滅ぼしたのは、市場原理だったのだろうか。残念極まりなく、そして無念である。すでに某所にも在庫はないようで、この夜の出会いに感謝である。


 日本の匠シリーズ
 1972年 サント・ネージュ セミヨン
 1964年 シャトー・メルシャン カベルネソービニヨン
 1975年 サント・ネージュ 甲州 


以上



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