ボデガス・ベガ・シシリア
試飲日 2003年02月11日
場 所    神奈川県某所k
照 明 蛍光灯
種 類 スペイン D.O 赤ワイン
生産者 BODEGAS VEGA SICILIA S.A
Vintage 1990
テーマ 少し贅沢に
ワイン VEGA-SICILIA "UNICO"

<ウニコ>

 抜栓後少し待って大振りのボルドー用グラスへ。深く濃い黒褐色。香りは複雑で、スミレ、黒糖、カカオ、紅茶、ベリー系のジャムなど極めて上品に、極めて静かに、極めて複雑に香っている。口に含めば、意外なほどさらりとしていて、この滑らか過ぎる味わいはあっという間に喉を通過し、なんだか物足りなさすら禁じえない味わい。丸みを帯びたタンニンと心地よい酸味に身を任せていると、あらよというまに喉元を通過するのだ。もっと濃密で、もっとコクがあり、もっと重いイメージがあった。しかし、1990ウニコは、いかにもエレガントに、いかにも洗練され、いかにも滑らかだった。

 ところが、である。飲み込んでから一秒ほど時間が経過すると、飲み込んだワインの数十倍とも言えるうまみ成分が、どっどど、どっどどっ、どどどどどどおおおおーーーと押し戻ってくるではないか。凄まじいほどのバックテースト。これを余韻と呼ぶのなら、今まで飲んできた多くのワインには余韻がなかったことになってしまう。押し戻る余韻で息が出来ない。すごい。ようやく息をしてもまだまだ余韻は健在。自分の手の届く範囲には、ウニコのうまみ成分が充満していて、手を伸ばせば、それに触ることすら出来るような錯覚に陥る。いつまでも、いつまでも、そしていつまでも続く余韻に、どうしようもないパワフルな感動を覚えざるを得ず、スペイン最高傑作の誉れをわが身に染み込ませる喜びに浸るのだった。ちょっとこれは凄い経験だ。

 ボトルのラストには、細かい澱が見受けられるが、ざらつくほどではなく、最後の一滴まで楽しむことができた。恐るべしウニコ。恐るべし1990。恐るべしスペイン魂である。

 ウニコは実に久しぶりで、当時の印象と今回の味わいはだいぶ違うように思われる。1981年はもっと濃縮で濃密だったように思われるが、今回の1990ウニコは、先月飲んだゴビィの2000ムンタダとイメージが重なり、その延長戦上にユベール・リニエの1997クロ・ド・ラ・ロッシュの華やかで堅実な印象を思い起こしたりする。ぶどう品種も生産地もビンテージも違う三者にどうしようもない共通点を見つけてしまうのは、私だけだろうか。この不思議な感覚は、世界一というテーマで共通するものの、なにやら極めて不思議な感覚である。エレガントな華やかさ繋がり・・・かな。そういえば、三者のワインはいずれも某氏と楽しませて頂いている。不思議なご縁にも感謝である。

 いずれにしても今回のウニコには凄まじいほどの感動を覚えた。この感動はボルドーの銘醸ワインを遠ざけるほど強烈で、事実この後に飲んだシャトー・オー・ブリオン1985を霞ませること必死であった。オーブリオンにも個性溢れる味わいがあり、決して悲観すべきは何もないが、比べられた相手がウニコでは、印象も薄くなるのもやむを得まい。

 ウニコについては、1981年のレポートに詳しい。このウニコは昨年某所のお年玉袋に入っていたもので、よく一年以上も待てたものだと我ながら感心したりしている。ウニコは飲み頃の状態で出荷されるので、澱さえ沈められれば、いつでも抜栓OKなのがうれしい。

 
以上

 


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